『ポニーテールとシュシュ』読解

今日は、『ポニーテールとシュシュ』というタイトルとその歌詞から、楽曲を
読解します。
一見すると物語的な曲ですが、注意深く深読みをしていくと、かなり戦略的にアイドル像を構築していることがわかりました。


タイトルは英語のponytailと仏語のchouchouから成っており、前者はさらにponyとtailに分けることができます。
まず、それぞれの単語を、現在用いられている意味や語源に言及しながら見てみます。

  • ・(英)ponytail

 言わずもがな、後頭部で髪を一つにまとめて束ねた髪型。

  • ・(英)pony

 小型の馬。
 少ない金額、わずかな量。
 若い女性合唱団、女性ダンサー。
 (動詞)金を支払う。

  • ・(英)tail

 尾、末尾、後部、後頭部、後ろ髪。
 尾行者、追従者。
 (俗語)セックスフレンド、女陰。

  • ・(仏)chouchou

 もとはchou(キャベツや頭部等、球状のものを指す)。
 (一般的に幼児語)お気に入りのモノ、人物。
 髪をまとめるための、布で包まれた輪ゴム。


次に、歌詞を見てみます。
登場人物は、とある男子学生と、彼が憧れる女子学生。
教室を舞台として、男子学生が女子学生を斜め後ろの席から眺めている。
その男子学生は、女子学生のポニーテールとシュシュを架け橋として、教室で目にしている光景を、海辺を走る妄想にオーバーラップさせていく。
しかしそれは叶わぬ片思いのままで曲は終わる。
妄想の中で彼と彼女の目が合いますが、現実においても妄想においても二人の間に物理的な接触は一切認められません。
視覚やイマージュだけが、彼の精神的な支柱といえます。


さて、題名と歌詞から『ポニーテールとシュシュ』を見てきました。
しかし、これはとある男子高生の妄想物語であるだけにとどまりません。
先に見たタイトルの単語の意味を見ると、アイドルに関わるものがいくつも散見されます(2009-11-07 「商業-情動-慈悲」)。
女、金、愛。
そこに今回加わった歌って踊る少女、あるいはそれを尾行・追従すること。
「握手会」や「ハイタッチ」、「サイン会」という制度を除けば、ファンはアイドルを視覚的に捉えるのみで、物理的接触が許されない存在です。
ましてや、「恋の尻尾(=tail)は捕まえられない」とあるように、アイドルと性交渉をもつなど、到底成し得ないことでしょう。
女子生徒=アイドル=AKB48メンバーを、彼女たちが気付かないところで見ている、というヲタの心理が、後席からじっと見つめているという『ポニーテールとシュシュ』の歌詞に恥ずかしげも無く表れているようです。
つまり、『ポニーテールとシュシュ』は、女子学生に恋する男子学生の物語を傍観しているだけの楽曲ではなく、メタレベルでアイドル・AKB48とヲタの関係を描写しているものではないか。
以上が、今回の結論です。


まとまりが無いのもご愛嬌。
愛ゆえの焦りが出ました。