商業-情動-慈悲

深く仕舞いこんだ文献を探してクローゼットを引っ掻き回していると、高校生の頃に買ったセックス・ピストルズの缶バッジが見つかりました。
懐かしい。
ピストルズやクラッシュといった王道から入り、SUM41やグリーンデイにも手を出したパンクな高校時代が蘇ってきました。
パンクといえば、音楽業界や社会全体の資本主義・商業主義的な風潮を、左翼的な立場から批判することを試みた音楽ジャンルとして知られています。
(自発的に試みたのか、結果的に試みることになったのかはここではひとまず考慮しません)
そんなパンクが攻撃の対象とした商業主義の極ともいえるのがアイドルではないでしょうか。
わかめが恥ずかしげの中学・高校時代はモー娘。最盛期で、当時はあんなもん誰が聴くかと突っ張っていましたが、今や立派なアイドルヲタに。
吉本隆明もびっくりの転向ぶりです。
そこで、アイドルの中核をなすであろう商業主義とは、英語でcommercialism。
その元となった名詞commerce(「商業・貿易」)は、接頭辞com(「共に」)とmerce(「商品」)とに分解できます。
このmerce(「商品」)はmercy(「慈悲」)の語源でもあります。
ファンはお金を払い、その対価・商品としてアイドルは(歌・ダンス・握手等を通して)慈悲の心を与える。
ここでcom(「共に」)が表すように、取引が成立します。
しかし、commerceには古語・文語として「性交」の意味も含まれます。
商業は潜在的に性的な情動を原動力としていると考えることは不可能ではないでしょう。


アイドルがファンに与える慈悲は無形です。
ファンがアイドルに支払う貨幣は有形です。
もしもこの取引を不公平と感じたファンが、アイドルに有形の見返りを、ましてや恋仲になって肉体なんぞを求めてしまっては商取引法違反です。
議論がやや飛躍していますが、ヲタ奴隷やらファンとの繋がりやらを考えていたら以上のようなことが思い浮かびました。
つまりはアイドルは決定的に彼岸と認識せねばならないということを言いたいだけです。